BIGLOBE 30YEARS

未来予報 20XX

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Webマンガ家 カメントツさん湧き上がる小さな炎が
大きな炎になれば、
未来は輝く。

Webメディアを中心に活躍する異色のマンガ家・カメントツさん。メディアに登場するときは仮面を被るというポップなキャラクターと、シュールなルポマンガが、Webユーザーに絶大な支持を得ています。そんなカメントツさんに「未来におけるWebメディア」というテーマでお話しを伺ってみました。

1986年8月18日、愛知県生まれ。
2005年、名古屋造形芸術大学を卒業。芸能プロダクションにてデザインを担当。退社後、カメラマン、雑貨デザイナーをへて、2013年、フリーのイラストレーターとして独立。2014年、上京してマンガ家としてデビュー。2015年、『オモコロ』『ジモコロ』などのWebメディアにて活動開始。
現在、小学館『ゲッサン』にて「カメントツの漫画ならず道」、リイド社『LEED cafe』にて「ぼくは、せんそうをしらない」連載中。

インターネットを活用する、という感覚はないですね

僕は今年で30歳になったので、BIGLOBEさんとは同い年なんですよ。つまり、インターネットの歩みとほぼ同時に成長してきました。もう10歳くらい若いと、物心ついたころからインターネットがある世代なんでしょうが、僕は、ネットの黎明期の記憶がぎりぎりある、“汽水域(きすいいき)世代”という感じです。

そんな僕の時代のインターネットは、アンダーグラウンドで、匿名性があって、誰もお金儲けをしようという考えはなくて、やたら独特なクリエイティビティにあふれていました。だからいま、僕がこうしてネットを舞台にマンガ家として、まかりなりにも活動させていただいているのは、考えてみるとすごく不思議な気分です。

「未来」を語る前に、僕のネット遍歴から、いかにしてWebマンガ家となったか? を振り返ってみると、僕がインターネットを始めたのは、中学2年生のときに、父にラップトップパソコンを買ってもらったことがきっかけでした。そのころ友達に、インターネットに詳しいヤツがいて、そいつが作ったサイトにお絵かき掲示板があったんです。もともと、絵を描くことは好きだったので、一生懸命に描いてアップしていたのが、インターネット上で表現をするスタートでした。それから、2ちゃんねるに書き込むようになり、順調に暗いインターネットライフを過ごしていくことになります(笑)。

2ちゃんねるでは、心霊スポットに突入する体験ルポのスレッドを立てていました。僕はそのころ、お化け屋敷にすごくはまっていたんですよ。ネット発の都市伝説がブームになっている時代でした。ちょうど、近くに廃墟があったので、そこを心霊スポットだということにして、僕が突撃する、という企画をやったんです。

そのとき僕は、顔をどうしても見せたくなかったし、キャラクターを設定した方がいいと考えました。ちょうど、友達同士でやっていた「戦隊」をコンセプトとしたアートユニットで5色の仮面を作っていたので、いま着けている黄色の仮面を被って突撃をやったんです。
仮面のキャラクターに名前はつけていなかったんですけど、2ちゃんねるの住民から、仮面を着けて突撃することから「カメントツ(仮面突)」と呼ばれるようになりました。僕が25歳頃の話です。

Webマンガ家としてデビューしたのは、2014年の12月からなので、ぜんぜん新人のペーペーなんですよ。実は、インターネットを活用しよう、という考えもなくて、やりたいことをやっていたら、結果的にこうなった、という感じなんです。
そもそも、「インターネットを活用する」という感覚はなかったですね。インターネットに携わっていればいるほど、インターネットという概念がなくなっていく、というか……。たとえば、仕事で電話を使っていると思うんですけど、「電話を活用する」なんてあまり考えないですよね。電話と同じように、普通にインフラとしてネット環境がある、そんな感覚です。
たしかに、有名になるためには、ネットを活用することはマストなことだと思っていました。でもそれは、電話をかけられない人は社会人として成立しない、というのと同じような意味でした。

「電話サラリーマン」って聞かないですよね。僕が「Webマンガ家」ではなく、ただの「マンガ家」を名乗りはじめたら、インターネットが定着したころなんだろうなと思います。個人的には、そろそろとっちゃおうかなって思っていますが(笑)。

インターネットが生み出す次のメディアやコンテンツが楽しみです

いまって、『楽しいことはいつまでも続くはずない』とみんなが漠然と考えている時代なんじゃないでしょうか。僕が好きだった2ちゃんねるも、いまでは過疎ってる。衰退ってあるんだということを、みんなが知ってしまいました。でも、滅びるものは滅びるべきだし、ステージが変わるだけで楽しさがなくなるわけではないと思うんです。

たとえば、今後、データ通信量は増えるだろうから、動画が主流になるでしょう。すると、アニメーションが簡単に作れるソフトやツールができて、いまのマンガはふわーっとなくなっちゃうかもしれません。さらに進化して、みんなが気軽にマンガを作れるツール、想像はつかないですけど、頭脳に直接、プラグを差し込んでマンガを作れるソフトみたいなものが登場したとき、ようやくマンガというものが、みんなのものになる。そのことによってマンガ家が滅んでも、ぜんぜん構わない。というか、それを望むべきですよね。マンガが、絵がうまいヤツ、ストーリーが作れるヤツだけのものではなくなることは、いいことだと思うんです。

マンガ家が滅びる、といっても僕は未来のメディアやコンテンツが暗いとはぜんぜん思っていないんです。逆にいえば、「マンガは大切な文化だから」と、みんながひきつった笑顔で僕のマンガを見る、という状況の方がよっぽど怖い。マンガが絶滅保護種扱いされるなんて、ゾッとします。

インターネットは新しいものをつなぐものなので、新しい可能性ができることで、新しいメディアやコンテンツが生まれる世界がくるのではないでしょうか。

湧き上がる炎が小さすぎて気づけていないのかもしれない

僕が想像する未来は、やりたい人がやりたいことをやる時代です。そして、「この仕事はお金をもらえなくてもいいからやりたい!」ということが、かなり大事になるような気がします。社畜という意味ではなくて、使命感で仕事ができるか? ということです。
だから、「やりたいことがない」という人がすごくタイヘンになるんじゃないでしょうか。そんな人は新しい時代にうまく乗っかれないかもしれない。いまでもこんなになんでもできる世の中で、それこそ、「明日、ブラジルに行きたい!」と思ったら行けちゃうわけですよね。なのに何もやりたいことがないというのは、タイヘンだな~というか、頑張って欲しいな~と思います。

でも、たぶん、やりたいことに気づいていないだけだと思うんですよね。自分のなかに湧き上がる炎が小さすぎて気づけていないのかもしれない。
僕がいま、やっているルポマンガ家という仕事はもしかしたら、そこに意義があるんじゃないかなと思っているんです。世の中の些細な楽しいことを大げさに、少し誇張を交えてみんなに伝える。「こんな面白いことがあるよ」「小さな炎があるよ」と伝える。大げさにいうと偉そうですけど、そういう仕事なのかなと最近、考えています。

インターネットで小さな炎を見つけた人ってたぶん、たくさんいると思うんですね。僕が2ちゃんねるで突撃をやっていたのも、「何かを自分で作りたい!」という情熱が炎としてきっと沸いたからなんでしょう。ずいぶん、暗い炎でしたが(笑)。
でも、そこからカメントツが生まれるわけだし、何が起こるかわからないですよね。

インターネットは面白いことだけに注目するメディアで、つまらないことをやったら誰も見てくれない。だからこそ、恥はかき捨てできるんですよ。なかったことにできる。どんどん失敗してもいい。いろいろチャレンジすればいい。その小さな炎が誰かの大きな炎になっていけば、未来はもっと輝いていくと思うんです。

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